「 氷の微笑 」
から25年前、初めて流氷に潜った。それまでは10度以下の水温では潜ったことがなかったので−2度という水温は全くの未知の領域だ。この水温では殆どのレギュレターが凍るらしいということを教えられていたし冷え切った空気を勢いよく吸い込むと吐き気を催すらしいいと言うことも人から聞いていた。うまく潜れるだろうか?写真を撮る余裕があるだろうか?30分、いや10分持つだろうか、初めての経験に不安と期待が入り混じり持っていった全てのセーターを重ね着したのを覚えている。
 ゆっくりと海に入る、まだ余裕がある。マスク越しに水面が近づき意を決して水中へ、頭をキリで指されたようなような感覚が一瞬あったが何とかいけそうだ。頭上には無数の氷が散在、そこから漏れる薄光が美しくそれを眺めながら進んでゆくと突如白く大きな塊が目に入った。金平糖のような巨大な塊は砂地に突き刺さるようにして鎮座していた。あまりにも威厳に満ちた姿と冷たく微笑みかけるような白塊に僕は近寄ることも出来ずに凍える手でシャッターを押し続けた。
撮影地:知床半島羅臼 NIKONOSV 15mm YS150 1/60 f8 コダックPKR




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阿部秀樹写真事務所/HIDEKI ABE PHOTO OFFICE
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