「 長い旅 」
生、長い間生きていると一度や二度は“命を賭けて”と思う事がある。勿論本当に命を賭ける訳ではないが意気込みとしてはこれくらいの覚悟をして物事に望むという事だが、自然界では毎日が食うか食われるかの真剣勝負、餌を見つける時も産卵をする時も“命を賭けている”訳だ。そして生き延びたものだけが次の世代に種の繁栄を託す権利が与えられる。  
 盛夏の夕方、日中の茹だる暑さが日没と共に徐々に爽やかな夕風になる頃、海辺近くの山合いから産卵(正確には放仔)の為に海辺までの長旅をするアカテガニ。海辺に降りてくるあいだにはヘビや鳥に狙われ、海岸線まであと一歩のところで車に轢かれてしまうものも多い。波打ち際で放仔のチャンスを伺い水際に突入した途端、親から放出された幼生達はイナッコ(ボラの幼魚)の集中砲火を浴びる事となる。海での生活を終えて再び三浦半島のこの地に戻ってこられるアカテガニの子供は何匹いられるのだろうか、そして親まで育ち産卵まで生き延びる事が出来るのは何匹いるのだろうか。「長い旅」はこれから始まる。
撮影地:三浦半島
キャノン EOS 3 100mmマクロ 1/180 f11 550EX コダック E100VS




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阿部秀樹写真事務所/HIDEKI ABE PHOTO OFFICE
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