「 出 番 」
然の事だが時代と共に世の中は変わってくる。ダイビングの世界でも機材が大きく変わってきた。その中でもスーツは大きく変わった物の一つだ。私がダイビングを始めた頃は色のあるスーツは珍しくスキン地の黒ずくめ、ドライスーツに至っては初任給の2.5倍もする高価なもので一部の人たちが使う特別な物だった。スキン地のスーツは良く裂ける。裂けては直し、又直し、それでもダメな時はガムテープで貼り付けて潜っていた。ボロボロのスーツを着ていても恥ずかしくはなかった当時が懐かしい。  
 まだ誰も起きて来ない初夏の明け方。野鳥の鳴き声と共に辺りが白み始めると対岸にある沼津の街並みは低く垂れこめた朝靄の中に隠れていた。そして手摺に干されていたウエットスーツが浮かび上がってきた。数時間後の出番を待つウエットスーツの束の間の時。今では色とりどりのドライスーツが干されている大瀬の20数年前の姿である。
撮影地:大瀬崎 ニコン F3 85mm 1/30 f2.8 コダック PKR




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阿部秀樹写真事務所/HIDEKI ABE PHOTO OFFICE
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