「 陽 光 」
真にするのが難しい被写体の中に海藻がある。柔らかでしなやか、光が透けるような質感が上手く表現しづらい。ストロボを正面から当てると黒ずみのっぺりとした造花のような生命感の無い写真になってしまうし、自然光だけだと当然の事ながら青みがかってしまう。そして時期も重要、「花の命は短くて」と同じように本当に美しい時は一瞬である。短命な上に光を吸収してしまう海藻!難しいけれど撮影のしがいのある面白い被写体だ。  
 日の光が強さを増してきた6月のある日、岬で一日中タンクを背負わずに海藻を撮影したことがあった。時間が止まってしまったような静寂感の中、水面まで伸びたホンダワラ類に囲まれた池のような場所を見つけた。ぽっかりと空いた水面には波一つ無く水底に差し込む初夏の光は幾何学的に重なり合うウミウチワに降り注いでいた。
撮影地:大瀬崎 ニコノスX 15mm 1/60 f8 コダックE100VS 自然光




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阿部秀樹写真事務所/HIDEKI ABE PHOTO OFFICE
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